Logicool MX Master 3S レビュー
公開日 最終更新
この記事の結論
MX Master 3S
★ 4.5/ 5
こんな人に: 複数のPCを行き来しながら、コードや長文・表計算を一日中スクロールし続けるデスクワーカー
良い点
- MagSpeedホイールのラチェットとフリースピンが自動で切り替わり、長いファイルの行き来が速い
- Flowで2〜3台のPCをマウス移動だけで横断でき、テキストやファイルのコピペもまたげる
- クリック音がはっきり小さく、オンライン会議中や共有スペースでも音を気にしなくていい
惜しい点
- 約141gは明確に重く、低感度で大きく振り回す使い方には向かない
- 本体が大きくカバンに入れづらい。持ち運び前提なら別のマウスがいい
- 手が小さいとサムホイールとサイドボタンに指が届きにくい
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目次
結論から書きます。MX Master 3S は、複数のPCを行き来しながら一日中スクロールし続ける人にとって、今のところ代替が見当たらないマウスです。重い・持ち運びに向かない・安くないという欠点はどれも本物ですが、MagSpeedホイールとFlowの2つがそれを押し切ります。
Logicool
MX Master 3S
総合評価4.5/5
評価
- 握り心地
- 4.5/5
- ホイール
- 5/5
- 静音性
- 4.5/5
- 多台数連携
- 5/5
- 携帯性
- 2.5/5
こんな人に複数のPCを行き来しながら、コードや長文・表計算を一日中スクロールし続けるデスクワーカー
価格・在庫は変動します。最新の価格はリンク先の販売ページでご確認ください。
この記事の前提と、製品の基本情報
この記事は実機所有レビューではありません。公表仕様と利用者の報告から、この製品が何を解決する道具なのかを整理したものです。
まずスペックを整理します。約141gのボディに7ボタンとサムホイールを載せ、8000DPIのセンサーを積んだ、いわゆる「作業用ハイエンドマウス」です。接続は Bluetooth と付属の Logi Bolt レシーバーの両対応で、Easy-Switch により最大3台まで登録して切り替えられます。
評価はデスクワーク用途に絞っています。 ゲーミング用途の指標(ポーリングレート、センサーのIPS、軽量性)はここでは扱いません。141gという重量は、競技用としては論外である一方、据え置きの作業用としては安定感になります。同じスペックが用途によって長所にも短所にもなるので、前提を固定しないと評価が定まりません。
モニター構成との関係は、27インチ4Kと34インチウルトラワイドを作業効率で比べた記事にまとめてあります。画面が広いほどポインタの移動距離が伸びるので、マウス選びとは地続きの話です。
MagSpeedホイールが効くのはコードとスプレッドシート
このマウスを語るとき、最初に来るのはやはりホイールです。
ラチェットとフリースピンが自動で切り替わる
MagSpeedホイールは、ゆっくり回すとカチカチとした刻み(ラチェット)で動き、勢いよく弾くと刻みが消えて金属ホイールが慣性で回り続けます。しかもこの切り替えが手動ではなく、回す速度で自動的に起きます。ここが従来の「ボタンでモードを切り替えるフリースピンホイール」と決定的に違うところでした。
具体的な効き方はこうです。関数の中身を数行ずつ追うときはラチェットで1行ずつ確実に、ファイルの末尾まで一気に飛びたいときはホイールを弾く。この2つを、手を止めずに、意識もせずに使い分けられます。数千行のログファイルや、行数の多いスプレッドシートを日常的に触る人ほど恩恵が大きい機能です。
慣れるまでは「回りすぎる」
正直に書くと、慣れるまではフリースピンが暴発して行き過ぎます。止めたい位置でホイールに軽く指を触れて減速させる操作が身につけば解決しますが、**この学習コストはゼロではありません。**どうしても合わなければ、Logi Options+ からラチェット固定に変更もできます。
Flow: 2台以上のPCを1つのマウスで行き来する
MagSpeedホイールと並ぶ、もう一方の柱が Flow です。
同じネットワーク上にある複数のPCに Logi Options+ を入れておくと、画面の端までポインタを移動させるだけで、隣のPCへポインタが移ります。ソフトウェア的なKVMのようなもので、キーボードも対応機種なら一緒に移動します。**「デスクトップで作業し、隣のノートで確認とチャット」**という2台持ちの環境なら、これが一日に何十回も発動します。
さらに効くのがクリップボードの共有です。Windows 側でコピーしたコードを、そのまま macOS 側にペーストできます。テキストだけでなくファイルもドラッグで移せるので、片方のPCから片方のPCへスクリーンショットを渡す、といった作業が一気に軽くなります。
静音クリックは「無音」ではないが、会議では確実に効く
3Sで一番わかりやすい進化点が静音クリックです。ここは期待値を正しく設定しておきたいところです。
まず、無音ではありません。押した感触はしっかり残っていて、「コッ」という低めの音がします。従来の一般的なマウスの「カチッ」という高い音が、耳につきにくい低い音に置き換わった、という表現が実感に近いです。従来モデルとの差は、音の大きさよりも耳につく成分が減ったことにあります。
dB値よりも効くのは音の質です。マイクは高い周波数の成分ほど拾いやすいので、そこが減れば同じ音量でも相手に届きにくくなります。オンライン会議でスライドを操作する、静かなコワーキングスペースで作業する、といった場面で差が出るのはこの理屈です。
キーボード側も静かにすれば、打鍵とクリックの両方が気にならないデスクになります。方式の違いは静電容量無接点方式とメカニカル方式の比較にまとめました。
一方で、クリック感そのものは旧モデルよりわずかに柔らかく、押し込んだ底の感触が曖昧になりました。カチッとした明確なフィードバックが好きな人にとっては、これはマイナス方向の変化です。
手の大きさで評価が割れる。合う人・合わない人
ここが購入前に一番確認してほしいポイントです。MX Master 3S は大柄で、しかも右手のかぶせ持ち専用と言っていい形状をしています。
手が大きめの人(実測19cm以上)
手首から中指の先までが19cmを超えるくらいの手なら、まず問題なく合います。手のひら全体が背面の高い山に乗り、親指がサムレストに自然に落ちます。この形状は手をかぶせた状態で支えることを前提に設計されているので、条件が合えば手首が反りません。
手が小さめの人(17cm前後まで)
小さめの手だと評価が変わります。本体をしっかり握れず、親指がサムホイールとサイドボタンの両方に届きにくくなります。特にサイドボタンは奥まった位置にあるので、押すたびに持ち直しが必要になるようだと、この機種の利点である「手を動かさずに操作が完結する」が崩れます。家電量販店の実機で、親指だけを動かしてサムホイールとサイドボタンを両方触れるか、必ず確認してください。
つまみ持ち・つかみ持ちの人
つまみ持ちの人には向きません。背が高く重心も高いので、指先だけで支える持ち方だと安定しません。つかみ持ちなら使えなくはありませんが、この形は明確にかぶせ持ちに最適化されています。持ち方別の選択肢は、用途と持ち方で選ぶ作業用マウスのまとめのほうで比較しています。
Logi Options+ は入れるべきか
結論としては入れる前提で買うべきです。
素のままでも左右クリック、ホイール、進む戻るは動きます。しかしジェスチャーボタン、アプリごとのボタン割り当て、そして Flow は Options+ がないと使えません。つまりこのマウスの価値の大半が、常駐ソフトの上に乗っています。ここを許容できるかどうかは、買う前に決めておいたほうがいい論点です。
ソフト自体の出来は、以前の Logicool Options 時代と比べればかなり良くなりました。動作は軽く、設定画面も整理されています。ただしバックグラウンドで常駐し、更新のたびに再起動を促されることもあります。常駐アプリを極力減らしたい方針の人にとっては、これは無視できないコストです。
現実的な構成は、ジェスチャーボタンにデスクトップ切り替え、サイドボタンにブラウザの進む戻る、ホイール押し込みに中クリックという地味な割り当てです。凝った設定より、アプリを問わず同じ挙動をするほうが手に馴染みます。 アプリごとに動きが変わると、押す前に考える時間が発生するからです。
欠点は重量・携帯性・価格の3つ
いい話ばかり書いたので、欠点も具体的に並べます。
重量が約141gあります。これは軽量ゲーミングマウスの2倍以上で、低感度でマウス自体を大きく振り回す使い方とは根本的に相性が悪いです。デスクワーク中心なら「勝手に動かない安定感」としてプラスに働きますが、カーソル操作の速さを重視する人には確実にマイナスです。
携帯性も良くありません。高さがあるため、薄型ノート用のスリーブに一緒に入れるのは無理があります。カバンの中で押されて背面に傷が入る構造でもあります。毎日持ち歩くなら、素直に薄型のモバイルマウスを別に用意したほうがいいです。持ち運び用との使い分けはMX Master 3S と MX Anywhere 3S の比較に書きました。
そして価格です。ベーシックな無線マウスと比べると、価格帯はかなり上になります。ただ、1回の充電で月単位まで使えるので、充電の手間が価格の割に合わないと感じる場面はありません。
長く使う前提なら、1日あたりのコストとしては受け入れられる範囲だと考えています。デスク環境全体の予算配分をどう考えるかは、デスクまわりを一式そろえるときの手順をまとめたガイドも参考にしてください。
ここが良い
- MagSpeedホイールのラチェットとフリースピンが自動で切り替わり、長いファイルの行き来が速い
- Flowで2〜3台のPCをマウス移動だけで横断でき、テキストやファイルのコピペもまたげる
- クリック音がはっきり小さく、オンライン会議中や共有スペースでも音を気にしなくていい
- 8000DPIセンサーでガラス天板や布マットでも安定して動く
- USB-C充電で、短時間の充電でもその日の作業は問題なく持つ
ここは惜しい
- 約141gは明確に重く、低感度で大きく振り回す使い方には向かない
- 本体が大きくカバンに入れづらい。持ち運び前提なら別のマウスがいい
- 手が小さいとサムホイールとサイドボタンに指が届きにくい
- 主要機能を活かすには Logi Options+ の常駐が事実上必須
- ベーシックな無線マウスと比べると価格帯はかなり上になる
結論: 買うべき人と、見送っていい人
買うべきなのは、PCを2台以上使っていて、長いコードや長いドキュメントを日常的にスクロールしていて、手が標準〜大きめの人です。この3つが揃うなら、Flow と MagSpeed ホイールが毎日効きます。逆にどれか1つでも外れると、価格に見合う場面がほとんど来ません。
逆に見送っていいのは、PCが1台だけの人、手が小さい人、マウスを毎日持ち歩く人、そしてゲームがメインの人です。特に手のサイズは後から慣れでどうにかなる要素ではないので、可能なら店頭で握ってから決めてください。
欠点は明確です。重い、持ち運べない、安くない。ただしその3つはどれも「据え置きで長時間使う」という前提では問題になりません。 自分がその前提に当てはまるかどうかだけで決まります。



