赤軸・茶軸・青軸の違いとスイッチの選び方
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目次
結論から書きます。赤軸・茶軸・青軸という色の名前は規格ではなく、各スイッチメーカーが自社製品に付けた呼び方にすぎません。 本質はリニア(まっすぐ沈む)/タクタイル(途中に山がある)/クリッキー(山に加えて音が鳴る)の3分類です。この3つのどれが自分に合うかだけ決めれば十分で、迷うならホットスワップ対応機を買って後から変えれば済みます。
「赤軸」はメーカーをまたぐ規格ではない
まずここを外すと、後の比較が全部ずれます。
キーボードの仕様表に並ぶ「赤軸」「茶軸」「青軸」は、JISやISOのような共通規格ではありません。スイッチを作っているメーカーがそれぞれ自社製品に色を割り当てているだけで、メーカーが違えば中身も違います。
この記事で扱う4機種でも、ARCHISS ProgresTouch RETRO TKL と FILCO Majestouch Convertible 3 は Cherry MX、Keychron K8 Pro は Gateron G Pro、エレコム V custom VK520L は購入時点ではリニア赤軸のみという構成です。
同じ「赤軸」と書かれていても、作っている会社が違います。押下圧の公表値も、ばねの伸び方も同一ではありません。「赤軸だから前に使っていたキーボードと同じ打ち心地」という前提は成立しないと考えてください。
慣例として色と分類の対応はおおむね揃っているので、色を手がかりにするのは間違いではありません。ただし色で決めた気にならず、仕様表で分類と押下圧まで見る。ここが最初の分かれ道です。
リニア・タクタイル・クリッキーという3分類
色の下にある実体はこの3つです。違いは「キーが沈んでいく途中で、何が起きるか」だけです。
リニア(赤軸系)
押し始めから底まで、引っかかりなくまっすぐ沈みます。途中に節目がないので、入力が確定した位置は指では分かりません。
そのぶん動作が軽く、同じキーを連続で叩く動作がしやすいのが特長です。ゲームで好まれるのはこの性質のためです。文章入力に向かないわけではなく、節目がないぶん指が引っかからず疲れにくいという理由でリニアを選ぶ人も多くいます。
弱点は、確定位置が分からないので底まで押し込む打ち方になりやすいことです。底打ちの回数が増えれば、音も指への衝撃も増えます。
タクタイル(茶軸系)
沈む途中に小さな山があり、それを越えた前後で入力が確定します。指が「今入った」と分かるのがこの分類の価値です。
底まで押し込まなくても入力は終わっているので、山を越えたところで指を戻す打ち方に移行できます。底打ちが減れば音も衝撃も減るため、文字入力中心の用途でまず試す価値があるのはここです。
弱点は、山の存在が引っかかりとして感じられる場合があること。連打の多いゲームでは、この山が邪魔になることもあります。
クリッキー(青軸系)
タクタイルの山に加えて、確定の瞬間に音が鳴る機構が入っています。「カチッ」という音と手応えが同時に返ってくるので、打鍵の満足感はこの3つで最も高くなります。
ただしこの音は仕様であって、対策で消せるものではありません。静音リングを付けても、鳴るのはクリック機構そのものなので効きません。同じ部屋に人がいる環境、Web会議が多い環境では選択肢に入らないと考えてください。1人で完結する部屋で、音を楽しみたい人のための分類です。
押下圧・アクチュエーションポイント・音の3軸で整理する
分類が決まったら、次は数字です。仕様表で見るべきなのは次の3つだけです。
押下圧 — 分類ごとの傾向はあるが、絶対値ではない
押下圧はキーが反応するまでに必要な力の目安です。各社の公表値では、おおむね次のような並びになります。
| 分類 | Gateron G Pro(K8 Pro) | Cherry MX(ProgresTouch・Majestouch) |
|---|---|---|
| リニア(赤) | 45gf | 45cN前後 |
| タクタイル(茶) | 55gf | 55cN前後 |
| クリッキー(青) | 60gf | 60cN前後 |
いずれもメーカー公表値です。エレコム V custom VK520L は動作圧50gと公表されており、リニアとしてはやや重めの設定になります。
見てのとおり、リニア→タクタイル→クリッキーの順に重くなる傾向は共通しています。ただしこの数字を疲労の指標として読むのは危険です。指の疲れに効くのは押下圧より、底に当たったときの衝撃だからです。軽い軸はキーの上で指を休められず、かえって誤入力が増えることもあります。
アクチュエーションポイント — 反応する深さ
キーがどこまで沈んだら入力が確定するかの深さです。Cherry MXもGateron G Proも約2.0mm、総ストロークは4.0mmが基本線です。V custom VK520L は1.9mmとわずかに浅く設定されています。
浅いほど反応が早く、深いほど誤入力しにくい。ただし0.1mm単位の差を感じ分けるのは難しく、優先度は押下圧や分類より下です。明確に効くのは、Cherry MXのスピードシルバー軸(3.4mm)のようにストロークごと短いモデルを選ぶときです。
音 — 分類とは別に、筐体でも決まる
音は軸だけで決まりません。同じ軸でも、筐体が軽ければ箱として鳴ります。ProgresTouch RETRO TKL が約960gと重いのは、打鍵の安定だけでなく音の質にも効く部分です。
音源の種類ごとの対策は打鍵音がうるさいときの対策に整理しました。まず読むべきは、次の項目です。
静音軸を選んでも、底打ち音は残る
ここは繰り返し書いている論点なので、あらためて明確にしておきます。
打鍵音には大きく2つの音源があります。
- 戻り音 — 指を離したときにキーが戻ってスイッチ上部に当たる音。「カチャカチャ」という高い音の正体
- 底打ち音 — キーを最下点まで押し込んだときの「ドン」という低い音
静音軸が抑えるのは、主に1の戻り音です。 Cherry MXの静音赤軸はステムにゴムを仕込んで機械音を吸収する構造で、ProgresTouch RETRO TKL と Majestouch Convertible 3 はこれを選べます。ストロークが4.0mmから3.7mmへわずかに短くなるのは、そのゴムが受け止めているぶんです。
一方、2の底打ち音は残ります。指がキーを押し切って底に当たる衝撃そのものは、スイッチの内部構造では消せないためです。さらにキーキャップと筐体が鳴る反響音も残ります。「静音」と書かれた軸を選んでも、無音にはなりません。
これは軸選びの失敗ではなく、構造上の限界です。対策としては、静音リングで底打ちの衝撃を受け止める、筐体に吸音材を入れる、そして底まで押し込まない打ち方に移行する、という順になります。静けさそのものが最優先なら、静音キーボードの比較で方式ごと見直すほうが早く着きます。
迷うならホットスワップ機を買って、後から変える
ここまで読んでも決めきれないなら、それが普通です。軸の好みは、実際に一定時間打ってみないと分かりません。
だからこそ、最初の選択に悩みすぎない道があります。ホットスワップ対応機です。基板にソケットが埋まっていて、はんだ付けなしでスイッチを抜き差しできます。
- 最初にリニアを買って、合わなければタクタイルのスイッチだけ買い直す
- 同じ筐体・同じキーキャップのまま軸だけ変えられるので、条件をそろえて比べられる
- 全キーの交換でも作業は30分程度。工具は付属することが多い
この記事の4機種では、Keychron K8 Pro とエレコム V custom VK520L が対応しています。逆に ProgresTouch RETRO TKL と Majestouch Convertible 3 は非対応で、購入時に軸を確定させる必要があります。
非対応機が劣っているわけではありません。軸の好みが定まっている人にとっては、ホットスワップ機構は不要な接点が増えるだけです。自分がまだ決まっていないのか、もう決まっているのかで選ぶ側が変わります。
軸を選べるキーボード4機種
分類の話を製品に落とします。スイッチ単体ではなく、その軸を選べるキーボードとして並べました。
| 項目 | イチオシKeychronK8 Pro | ARCHISSProgresTouch RETRO TKL | エレコムV custom VK520L | FILCO(ダイヤテック)Majestouch Convertible 3 テンキーレス |
|---|---|---|---|---|
| 総合評価 | 4.6/5 | 4.2/5 | 4.1/5 | 4/5 |
| レイアウト | テンキーレス(日本語配列版は91キー) | テンキーレス(日本語91キー・かな刻印なし) | 75%(日本語配列) | テンキーレス(日本語91キー・かなあり/かななし) |
| 選べる軸 | Gateron G Pro の赤軸(リニア)/茶軸(タクタイル)/青軸(クリッキー) | Cherry MX の茶軸/青軸/赤軸/静音赤軸/スピードシルバー軸(型番で分かれる) | 購入時はリニア赤軸のみ。ホットスワップでタクタイル・クリッキー系に載せ替え可 | Cherry MX の赤軸/茶軸/青軸/静音赤軸(型番で分かれる) |
| 押下圧 | 赤軸45gf・茶軸55gf・青軸60gf(メーカー公表値) | Cherry MX公表値で赤軸45cN前後・茶軸55cN前後・青軸60cN前後 | 50g(メーカー公表値) | Cherry MX公表値で赤軸45cN前後・茶軸55cN前後・青軸60cN前後 |
| アクチュエーションポイント | 2.0mm(総ストローク4.0mm) | 約2.0mm(総ストローク4.0mm、静音赤軸は3.7mm、スピードシルバー軸は3.4mm) | 1.9mm(総ストローク4.0mm、メーカー公表値) | 約2.0mm(総ストローク4.0mm、静音赤軸は3.7mm) |
| ホットスワップ | 対応(はんだ付けなしでスイッチを交換できる) | 非対応(購入時に軸を確定させる) | 対応(はんだ付けなしでスイッチを交換できる) | 非対応(購入時に軸を確定させる) |
| 接続 | USB-C有線+Bluetooth(3台切替) | USB有線(付属の変換コネクタでPS/2にも対応) | USB有線(着脱式)+2.4GHz無線+Bluetooth | USB有線+Bluetooth(複数台切替に対応) |
| 楽天で確認したSKU | K8P-J1-JIS(日本語配列・赤軸・RGBライト・ブラック) | — | TK-VK520LBK(ブラック) | FKBC91MRL/JB3(日本語かなあり・赤軸) |
| 本体サイズ・重量 | — | 幅360×奥行140×高さ28〜37mm・約960g(ケーブル別、メーカー公表値) | — | — |
| こんな人に | 赤軸・茶軸・青軸のどれが合うか決めきれず、後から変えられる余地を残したい人 | Cherry MX の赤軸・茶軸・青軸を、余計な機能を挟まず素の形で選びたい人 | まず売れ筋の赤軸から入って、必要なら後から軸を載せ替えたい人 | 無線でも使いたい前提で、静音赤軸まで含めて軸を選び切りたい人 |
| 購入先 |
決めきれないなら Keychron K8 Pro
Keychron
K8 Pro
総合評価4.6/5
評価
- 打鍵感
- 4.5/5
- 静音性
- 3.5/5
- 軸の選べる幅
- 5/5
- 入手しやすさ
- 4/5
- コスパ
- 4.5/5
こんな人に赤軸・茶軸・青軸のどれが合うか決めきれず、後から変えられる余地を残したい人
価格・在庫は変動します。最新の価格はリンク先の販売ページでご確認ください。
Gateron G Pro の赤軸・茶軸・青軸から選べて、しかもホットスワップ対応です。買った後に選び直せるという点で、この記事の趣旨に最も合います。QMK/VIA対応でキーマップも変えられるため、軸以外の不満も後から潰せます。単体の詳細はKeychron K8 Proのレビューにまとめました。
ここが良い
- ホットスワップ対応なので、最初に選んだ軸が合わなくてもスイッチだけ買い直せば作り替えられる
- 同じ筐体・同じキーキャップのまま軸だけ変えられるため、赤軸と茶軸の違いを条件をそろえて比べられる
- QMK/VIA対応でキーマップも変更でき、軸の相性以外の不満も後から潰せる
- 有線とBluetooth3台切替の両対応で、仕事用PCと私物PCを1台で兼ねられる
ここは惜しい
- 標準構成のままだと打鍵音は素直に大きく、軸を静音系に替えても底打ち音は残る
- 背が高くパームレストなしでは手首が反るため、実質的に追加出費が要る
- 日本語配列モデルは流通するSKUが限られ、選べる軸の色が時期によって偏る
背が高い機種なので、パームレストの費用まで含めて予算を見ておいてください。標準構成の打鍵音は素直に大きく、静音系に替えても底打ち音が残るのは前述のとおりです。
素の形で選ぶなら ARCHISS ProgresTouch RETRO TKL
ARCHISS
ProgresTouch RETRO TKL
総合評価4.2/5
評価
- 打鍵感
- 4.5/5
- 静音性
- 3.5/5
- 軸の選べる幅
- 4.5/5
- 入手しやすさ
- 4/5
- コスパ
- 4.5/5
こんな人にCherry MX の赤軸・茶軸・青軸を、余計な機能を挟まず素の形で選びたい人
価格・在庫は変動します。最新の価格はリンク先の販売ページでご確認ください。
同じ筐体で Cherry MX の茶軸/青軸/赤軸/静音赤軸/スピードシルバー軸まで用意されており、軸の違いだけを比べる土台として分かりやすい製品です。Cherry MX純正なので、公表値をそのまま判断材料にできます。約960gという重さは打鍵の安定に効きます。
ただしホットスワップ非対応で、有線専用、バックライトもありません。軸を外したときに取り返しがつかないので、分類がすでに決まっている人向けです。
赤軸から始めるなら エレコム V custom VK520L
エレコム
V custom VK520L
総合評価4.1/5
評価
- 打鍵感
- 4/5
- 静音性
- 3.5/5
- 軸の選べる幅
- 3.5/5
- 入手しやすさ
- 5/5
- コスパ
- 4.5/5
こんな人にまず売れ筋の赤軸から入って、必要なら後から軸を載せ替えたい人
価格・在庫は変動します。最新の価格はリンク先の販売ページでご確認ください。
購入時はリニア赤軸のみですが、ホットスワップ対応なので後から載せ替えられます。国内メーカー品で量販店の在庫が厚く、買う前に実機に触れる機会が多いのは軸選びでは大きな利点です。アクチュエーションポイント1.9mmと浅めで、リニアの「軽く速い」性格が分かりやすい設定になっています。
弱点は、購入時点で軸を選べないこと。茶軸・青軸を試すには別途スイッチを買う必要があります。ゲーミング寄りの装飾があるため、落ち着いた机には浮きやすい点も踏まえてください。
静音赤軸まで含めるなら FILCO Majestouch Convertible 3 テンキーレス
FILCO(ダイヤテック)
Majestouch Convertible 3 テンキーレス
総合評価4/5
評価
- 打鍵感
- 4/5
- 静音性
- 4.5/5
- 軸の選べる幅
- 4/5
- 入手しやすさ
- 3.5/5
- コスパ
- 3.5/5
こんな人に無線でも使いたい前提で、静音赤軸まで含めて軸を選び切りたい人
価格・在庫は変動します。最新の価格はリンク先の販売ページでご確認ください。
赤軸・茶軸・青軸に加えて静音赤軸まで同一シリーズで選べます。 「静かさ優先」という答えを、他の軸と同じ土俵で選べるのがこの製品の価値です。日本語配列でかなあり/かななしまで分かれており、配列を妥協せずに軸だけを選べます。有線とBluetoothの切替にも対応します。
こちらもホットスワップ非対応で、価格帯も上がります。軸選びを外したときの損失が最も大きいのはこの製品です。静音赤軸を選んでも底打ち音は残る、という点も繰り返しになりますが押さえておいてください。
まとめ
- 色ではなく分類で決める — 赤=リニア/茶=タクタイル/青=クリッキー。色は各社が付けた名前で規格ではない
- 見る数字は押下圧とアクチュエーションポイント — ただし押下圧は疲労の指標ではない
- クリッキーは同室に人がいるなら外す — 後から静音化する手段がない
- 静音軸でも底打ち音は残る — 消えるのは主に戻り音。無音にはならない
- 決まっていないならホットスワップ機 — 最初の選択を間違えても、スイッチだけ買い直せる
軸は「正解を当てるもの」ではなく、打ちながら寄せていくものです。最初の1台で完璧を狙うより、変えられる余地を残して買うほうが結果的に近道になります。価格帯ごとの機種選びはメカニカルキーボードのおすすめに、方式まで含めた全体像はキーボードの選び方にまとめました。



